筆者は、悪役代表として忌み嫌われる【鬼】の村=「鬼村」というオゾマしき地?の出身です。
それも、かつて「八代姫」の住まいした「八代山(やじろやま)」近くの「八代(やじろ)」(穂ノ木)の地は、筆者所有地でもあります。
また、「八代姫神社」跡地の脇道が通学路だったということもあり、「【鬼】への愛情と思い入れ」も一入(ひとしお)であることから、これほどまでに【鬼】を悪者扱いされては、いささか黙ってはいられなくなりました。
ちまたに踊る、【鬼】とは、化け物・妖怪の類なり。人に禍をもたらす怪物なりという、戦勝者による「鬼ねつ造話」を誰もが信じて疑いません。
それが、当世の【鬼】に対する
世の中の常識≠ネのですから致し方のないことなのですが…。
しかし、「本物の鬼捜し」をしないことには、このままでは未
来永劫
【鬼】は化け物・妖怪≠フレッテルを貼られ続けたまま終わってしまいます。
そうなれば、まさしく戦勝者の思うツボなのですが、〈愛しき【鬼】をワルモノにさせてはなるものか!〉との思いがこみ上げてきました!
戦勝者のウソで塗り固められた【鬼】の実体が知りたくなったのです。
それには、本物の【鬼】探ししかありません。
【鬼】そのものの我が村=鬼村…
かつて、【鬼】といわれた地です。
そして、一度聞いたら決して忘れることの無い、かなりインパクトの強い地名です!
ここには、【鬼】に係わる何かがあるに違いない。
この地にこそ、【鬼】なるものの手がかりがあるのではない
か?≠ニの思いがだんだん強くなっていったのです。
『角川地名大辞典』には、大田市大屋町は、『出雲神話』ゆかりの地である!と記されてはいますが、それを物語る資料がほとんど存在しないことから、まずは、地元の地名(特に「穂ノ木」)、神社・祭神名を調べることから始めました。
すると、そこには期待以上の答えがいくつも見つかり、さらに、奈良、京都、兵庫、鳥取、岡山、広島、山口、愛媛、香川の各県へと出向いてみると、そこにもまた、予想以上の事物が数多存在し、筆者を大いに喜ばせました。
古代、ムラの首長が死ぬと、神として祀られました。
人望の厚い長ほど、崇め敬われたことから、神としての格は高くなります。
この論理からいくと、
【鬼】は神としては、最高位にランク付けされる
のではないでしょうか?
というのは、これほどまで全国津々浦々に、【鬼】が極悪の化け物であるとのイメージが浸透している≠ニいうことは、裏を返せば、
【鬼】は、民の信望厚き最優秀な神であった!
という証なのですから…。
これらのことから、「鬼神」をはじめ、「鬼神神社」、「鬼神
社」、「鬼前」、「鬼神谷」、「鬼の岩屋」、「大鬼山」、「鬼林山」等々の【鬼】にちなむ名称は、むしろ誉れ高き名称として現存しているのではないでしょうか?
そうでなければ、誰もが忌み嫌う妖怪・化け物の象徴=【鬼】なる名称を、好んで付けるとは考えにくいのです。
心底【鬼】を嫌うのであれば、【鬼】が敗者の時代となってからは、容易にその名を排除、抹殺、改ざん出来たでありましょうに、二十一世紀の今になお残るこれらの名称は、かの地での、【鬼】に対する厚遇ぶりを表していると思うのですが…。
全国の悪役総代表、泣く子も黙る【鬼】ですが、たまたま、【鬼】(地名)に住まいする神々であったから【鬼】なのであって、これが、「江戸」に住んでいれば【江戸】なのであります。
【鬼】のような…≠ニいう表現が、【江戸】のような…≠ニ相成る訳です。
「地名から起こる神の名」こそ最も古い神名のスタイルであることから、【鬼】の長=「鬼神」の図式となり、「おにがみ」誕生となったものと考えます。
このようなことから、【鬼】は、決して架空のおぞましき怪物
などではなく、「人」であり「神」であったと考える所以なのです。
以上、数々の資料から得た結論は―
【鬼】(地名)に住まいした
一族の名=【鬼一族】こそ、
【鬼】そのものであり、
人であり、神であった!
そして、
オオグニヌシノミコト、スサノヲノミコトは、
歴代王朝の源「石見・出雲王朝」の天王であり
「鬼神」そのものであった!
ということです。
石見は、遺跡・古墳の出土が少なく、「確たる証拠」が少ないことから、かなり荒削りな【鬼】擁護論と考えますが、全国に忌み嫌われし、愛すべき【鬼】の片鱗を感じとっていただければ幸いです。
平成二十一年二月
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