火星にまで人工衛星の飛ぶ現代においても、誰もがアレルギー反応を示すほどに嫌われものの【鬼】…。
【鬼】とは…
“その得たいが知れぬだけに身がすくみ、縮み上がるほど実(げ)に恐ろしきモノ、化け物、妖怪の類”と、ほとんどの人々が考えていると思います。
誰一人として、本物の【鬼】など見たこともないのにです。
往昔から、“何か分らぬが、とてもおぞましきモノ。角や牙を生やし、金棒を振り回しては、人々を恐怖のどん底に陥れる、赤や青色の皮膚をした怪物”なる言い伝えによる先入観から、【鬼】=「化け物」のイメージを膨らませるだけ膨らませてしまっているのです。
筆者は、石見国(島根県)「鬼村」の生まれです。
ご多聞に漏れず、筆者自身も、【鬼】=「おぞましきモノ」なるイメージから、<何故、「鬼村」などという恐ろしい所に生まれたのだろう>と、幼少の頃から思い悩み続けてきました。
【鬼】は悪者なり≠ニ、洗脳され続けてきたため、【鬼】の村=「鬼村」などという恐ろしい地名に嫌悪感を抱き続けてきたことから、この地を選んだ先祖を恨んだものです。
それゆえに、つい最近まで、出身地が「鬼村」であることを語れずにいました。
「鬼の村」だなんて…、このものすごい地名≠ェ、とてもとても恥ずかしかったのです。
その理由はといえば…
前出のごとく、【鬼】など見たこともないのに、戦勝者による鬼は悪しき化け物である≠ニのキャッチフレーズを、鵜呑みにしてきたからにほかありません。
三世紀に「九州王朝」に敗れ、七世紀には「近畿王朝」に敗れと、敗れに敗れ、まさに敗者となった【鬼】…。
歴史は、いつも戦勝者側ストーリーであることから、【鬼】の「実像部分」は、ほとんどが抹殺されてしまい、【鬼】は化け物・妖怪・悪者である≠ニの「虚像部分」のみが、一,八〇〇年もの間、全国津々浦々へ喧伝され続けてきたことから、【鬼】に対するイメージは今もって劣悪極まりないのです。
【鬼】は、本当に、人々に乱暴を働き、子供までをも捕っては喰らう妖怪≠ネのでしょうか?
ここまでトコトン嫌われる理由は、一体何なのでしょう?
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